コラム「大我の一滴」「あの社員に限って」は、本当に大丈夫か。
― 不正は「悪い人」が起こすとは限らない

「あの社員は、もう20年も勤めているから大丈夫」

「経理はずっと彼女に任せている」

「うちは社員同士の仲もいい。そんなことをする人はいないよ」

不正の話をすると、経営者からこうした言葉を聞くことがあります。

確かに、社員を信頼することは大切です。

しかし、人を信頼することと、不正が起きない仕組みをつくることは別の話です。

不正には、「動機」「機会」「正当化」という三つの要素が関係すると考えられています。

お金に困った。
会社への不満がたまった。
自分ばかり損をしていると感じた。

そこに、

「自分しかこの仕事を知らない」
「誰もチェックしていない」
「少しくらいなら分からない」

という環境が重なる。

そして、

「後で戻せばいい」
「これくらいは自分がもらって当然だ」
「会社だって自分を正当に評価していない」

と自分の行為を正当化する。

こうして、これまで問題を起こしたことのない社員でも、不正に踏み込む可能性が生まれます。

だから、不正対策で重要なのは、社員を疑うことではありません。

「誰が担当しても、不正を起こしにくい会社」にしておくことです。

一人の担当者に権限が集中していないか。

長期間、同じ人だけが同じ業務を担当していないか。

承認が形だけになっていないか。

現金、在庫、経費、仕入、売上などに、チェックされない領域がないか。

そして経営者自身が、「結果さえ出せば多少のことは構わない」というメッセージを発していないか。

不正が発覚した会社で問われるのは、本人の問題だけではありません。

「なぜ、それができる状態になっていたのか」という会社側の仕組みも問われます。

信頼している社員だからこそ、不正ができない仕組みにしておく。

それは社員を疑うことではなく、社員と会社の双方を守る経営管理なのです。

では、あなたの会社には、

「この人しか分からない」「この人に任せておけば大丈夫」

となっている仕事はないでしょうか。

もしあるとしたら、その仕事は「信頼」で守られているのか、それとも「仕組み」で守られているのか。

一度、確認してみる価値があるかもしれません。

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